レポート・インタビュー 片本満大

かたもとオーガニックファーム 片本満大さん
亀岡市篠町

かろやかなフットワークで、アイデアを形に

Report

 

できるだけ自然のままで工夫する

かたもとオーガニックファームでは、農薬や化学肥料不使用で、年間70品目以上の野菜を育てている。畑の総面積は4反。そのうちビニルハウスが2つで、山なりの地形に合わせて9枚の畑がある。枚数の多い、細かく分かれた畑を1人で切り盛りしているから、片本さんの毎日は忙しい。朝は4時に起床し、作業に取りかかるのだそう。実際に畑を訪れ、話を伺った。
まず、ビニールハウスに案内してもらった。サニーレタス、パクチー、スティックブロッコリーなどが植えられていた。1つの畝に複数種類の野菜を育てているのが特徴的だ。また、マルチシートは温度を保ち、乾燥を防止する役割があるのだという。そして、肥料を使わない代わりに落ち葉を敷き詰めて腐葉土を形成している。

1つの畝に、いくつかの野菜をいっしょに植えるには理由がある。たとえば、ブロッコリーとレタスを同じ畝に植えた畑では、秋には蝶や青虫がアブラナ科のブロッコリーに寄ってくる。しかし、キク科の匂いは蝶を寄せ付けないため、ブロッコリーの間にキク科であるレタスを植えることで、害虫から野菜を守っている。
さらに、かたもとオーガニックファームでは必要以上に雑草を刈らない。すべて刈ってしまうと、害虫の行き場がなくなって野菜を食害されるからなのだそう。このように、無農薬でも害虫を寄せ付けないために独自の工夫がされている。

1つの畝に2列のブロッコリーが並んでいるが、その間にレタスが植えられていた。 取材中に見つけた、ダイコンサルハムシ。野菜を食害する虫

小麦が植えられた畑では、畝を機械で割って溝を作ったところにオクラの小さい芽が等間隔に生えている。オクラは、少し育ってから根にさらに土をかけるので、最初から深いところに植えておくと楽なのだという。また、深いところは水が乾きにくく、適度な湿り気が残るので、たくさん水をあげる必要がないのだ。
農薬や化学肥料を使えばより効率的に野菜を育てることができるかもしれないが、片本さんはそれらを使わずして、工夫に工夫を重ね、日々美味しい野菜を作っている。だからこそ、野菜も採ったその場で心配なく食べられるし、みずみずしくてとっても美味しかった。

一見麦畑に見えるが、よく見てみると、畝を割った溝に小さなオクラの芽が確認できる

作り手や届け手とともに

片本さんは、自ら取り組むオーガニック農業を伝えることにも積極的だ。いっしょに田植えをしてから、野菜中心のランチをいただく会を催したり、自宅に持ち帰ることのできるベビーリーフのプランターを販売したり……。さらに、このプランターをレストランのカウンターに置いてもらい、その場で料理に使ってもらえるよう、試行錯誤しているのだそう。
1人で農業を始めて約1年半。若手農家ならではの新しいアイディアや目標を持っていた。しかし、一人でできることは限られているので、いろんな人と協力して形にしていきたい、と話してくれた。

ベビーリーフプランター。このまま育てて収穫し、採れたてを食べることができる。小プランター3000円、大プランター5000円

畑で育てた野菜は、毎週土曜日に自宅で行われる「ガレージマルシェ」にて、朝採りを販売している。また、レストランや旅館などでも数多く使われていて、KIRI CAFEもそのひとつ。また、三田市の「SUNマルシェ」や亀岡市の「湯の花温泉」でも定期販売を行なっている。

取材・文 / 冨塚花子(京都造形芸術大学文芸表現学科2年)

 

Interview

 

以前はモトクロスライダーだった

 僕は京都の大学時代、二輪部でモトクロスを始めてから、モトクロスライダーをしていました。亀岡には18歳で来て、その後もずっと住んでいます。野菜を食べたり運動したりと体にいいことが好きで、家庭菜園にも挑戦していました。
そんな中、知り合いの紹介で京丹後の梅本農場という、農業をしてる人で知らない人はいないと言われる農場に行く機会があったんです。そこでオーガニックがどういうものなのかはじめて知って、早速家庭菜園に取り入れるようになっていました。
もともと50歳くらいになったら仕事を辞めて、農業をしたいななんて思っていたのですが、怪我をきっかけに辞職し、本格的にオーガニック農業を始めることにしました。一人で畑を借り始めて今で1年半ほどになります。

体に悪いことが何1つない

うちの畑では農薬・化学肥料は使ってなくて、体に悪いことが何1つないんですよ。
化学肥料を使うと大きな野菜を簡単に作ることができるのですが、その肥料に虫がたくさん寄ってきます。そこで、その害虫を殺すために農薬を使うのですが、そうすると、害虫だけじゃなく、体を元気にしてくれる菌も死んでしまうのです。乳酸菌や納豆菌がそうですね。それらの菌こそが旨味であったり、丈夫な野菜を作ったりするので、農薬は使いたくないし、使わないんです。ちなみに、保育園に通う娘は丈夫な野菜を食べているからか、2年間風邪をひいてないんですよ。
そして、うちで肥料の代わりにしているのが、落ち葉と草。例えば、草を刈ったら、畑に敷き詰める。山に入ったら、落ち葉で土が隠れているでしょう。落ち葉の下には腐葉土があって、とても水持ちが良い。かといって、べちょべちょではない。良い水分量を保ってくれるんです。その状態を畑でも再現したいなと思って、実際に軽トラで山の落ち葉を集めに行きます。

都会と田舎を併せ持つ魅力

亀岡のいいところは、都会と田舎の半々というか。田舎なので農業がしやすい土地なんですが、できた野菜を都会へ売りに行くのも近いんです。田舎は好きだし、もっと田舎でも農業はできるんですが、そうなると少し不便なんです。子供がいるので、保育園にも近い方がいいですしね。今、保育園は家から歩いて10分くらいなので、子供にも集まってもらいやすいし、畑にもきてもらいやすいんです。

給食に無農薬野菜を

今後の展望としては、亀岡の給食に使われる野菜を無農薬にすることです。でもそれはすごくハードルが高いことなんです。
給食って一食260円くらいなので、安くないと買ってもらえないし、そして、安定してたくさんの量を供給する必要があるので、グループを作らないといけません。オーガニックは生産が不安定なので、野菜ができない時期は休暇をとる農家や八百屋もいるんです。でも、給食に使ってもらうにはそれではダメなので、技術を高め、仲間と協力して、亀岡市が納得してくれるような環境を作っていけたらと思っています。

芸術×農業×オーガニックで成長を

芸術、農業、オーガニック、これらが混ざったら面白いと思うので、一緒に成長できたらいいな。
今実際に、KIRI CAFEのメニュー「おかずクレープ」にかたもとオーガニックファームの野菜を使ってもらっているんです。2018年11月のKIRIマルシェに出店したのが始まりなんですが、その後料理家の山フーズさんが畑を見にきてくれて、わさび菜や高菜、ブロッコリーなどを使ったレシピを考えられたんです。
いろんな人と一緒にいると、発想も豊かになるし、刺激を受けるので、こうした関わりはすごく良いと思います。
そしてやっぱり、オーガニックを広めたいです。オーガニックがどういうものなのかを知ってもらった上で、何を選ぶかは自由だと思うので、まずは知ってもらいたいですね。

インタビュー・文 / 冨塚花子(京都造形芸術大学文芸表現学科2年)

公開日:2019年10月23日