2018/9/24

KIRI WISDOM vol.1 「半農半Xと移住」

ゲスト:塩見直紀

 

深い霧の中。亀岡ではよく目にする風景です。
それは人生に当てはめると、あまり良くない表現として使われます。
でも亀岡の人たちは知っています、霧はいつか晴れる。それも晴天とともに。
塩見直紀さんは20代から「半農半X」という言葉を産み、世に問うてきました。
その言葉は霧の中にいた、幾多の人々の人生の羅針盤になりました。
霧の芸術祭のテーマの1つである「農」へのアプローチを考える上で、塩見さんの航海話を聞きました。


     

半農半Xが生まれた

半農半Xが誕生して25年がたちました。私が28、29歳の頃、青年だったころに生まれた言葉です。4文字みただけで、悟れる人はたくさんいる。その言葉はどういう方向に生きればいいかという方向を提示したのではないか。私の20代の悩みは、気候変動が厳しい、環境問題時代をどう生きるかと、自分のミッションは何か、が2大問題でした。農業は大事だけど、専業は自信がない。農業ゼロパーセントはやっぱりまずいんじゃないか。化石燃料が入らないことも想定しつつ、他の生命を大事にする。たどり着いたのが半農でした。どう生きるか、入社したフェリシモという会社は、芸大出身の人が多くて自分だけ、凡人のように感じました。何もないように見える私にも何かあるんじゃないか、ということで未知数という意味のXを入れました。言葉が誕生して自分探しは終わりました。半農半Xを伝える仕事をやらせてもらっています。そして、1999年、33歳の時に綾部市(京都府)にUターンしました。

環境に配慮し、社会に貢献する

半農半Xには、スローダウン、環境問題対応、後世への配慮だけじゃなくて、創造性の発揮、ソーシャルデザインの気持ちも含まれています。半農半Xは農地の面積に関係ありません。都会でも田舎でもOKです。Xは週末のボランティアだけでも。Xのない方は周囲へのサポートを。半農半Xは農へのリスペクト、人間中心主義を超えること、サバイバル対応もできる。食糧がなくて困ることはない。うちの家族だけには安心なものを食べさせたい、お父さんお母さんもおられるし、アーティストには農からいろいろなインスピレーション、ヒントがもらえる。
半農半Xがどういった人に受け入れられているか。読者層は20~40代の子育て世代ということで、各地域が半農半Xの若者を入れたい理由になっている。村のにぎわい、就農志向、村の農地が少しでも守られるということは重要なことではないかなと思います。それから価値観が共通しています。今まではファーストな忙しい生き方をしていたけども丁寧な生き方をしたい。暮らしを丁寧にしたい。味噌くらいは、作りたい。創造性を発揮をしたい。手に職をつけたい、手仕事を取り戻したい人がいる。よく田舎暮らしと半農半Xの違いを問われることがあるんですが、田舎暮らしは自己都合で自己目的で田舎暮らしをされる方もおられる。半農半Xの共通点としては、社会性、自分のもっているものを世に貢献したいという気持ちがある。半農半Xを提唱してきたけど逆風ではなく追い風を感じています。地震、台風災害が頻発して、人間の行いが悪かったのではないか、生き方を考え直せというメッセージじゃないかと言われてきました。北極星も灯台も見えない時代、羅針盤があるはずなのにあやうい時代にいる。そんな中、半農半Xは島根県で政策として使われ、東アジアに広がり、半農半X的な映画もできた。国も世界中がビジョンを失っているので市民発のビジョンを示したい。

逆風半帆

順風満帆という言葉は、いっぱい聞いてこられたと思うのですが、最近ある本で逆風半帆という言葉に出会いました。逆風の時は満帆にしておくと折れたり、いざという時にコントロールがきかない。逆風時代なので、半帆的がいい。中途半端の半ではなく、もっと深い哲学ができるのかと思います。子どもが国語の通信添削をやっていたら島崎藤村の「嵐」という小説が事例としてのっていて「半農半画家」という言葉が登場していて教わりました。志賀直哉は半農半医と表現。半農半陶という言葉もある。屋久島在住の作家・星川淳さんの出会いで半農半著を知るんですけども、僕は半農半〇〇を目指してきました。千葉県に行ったらソーラーシェアリングで売電と農業もやっていた。いろんな組み合わせがある。大事なものを守るために時代は、半林半X、半議員半Xといった方向に行かざるをえないのではないかな。
半農半Xの普遍性の背景には生きづらさというのがあるのではないかな、と思っています。
人は何かをたべないと死んでしまう宿命。そして生きる意味がないとつらい。半農半Xのシンプルの背景です。福岡県の町役場の方が教えてもらったんですが、このまちでは農地や空き家も提供できるが、仕事はない。若い人がやりたいような仕事はありませんと言われます。半農半XのXをもつ人がきてくれたらということでした。日本の多くの所は若い人がやりたいような仕事が少ないのではないかなと思います。

田もつくろう、詩もつくろう

「詩を作るより田を作れ」ということわざから、別の3パターン考えてみた。(1)田んぼをつくるより詩をつくろう。京都造形大の方、こんな感じですかね。やっぱりアーティストは魂の表現だ。(2)田はプロ農家にまかせたらいいんじゃないか。詩は谷川(俊太郎)さんに任せたらいいんじゃないか。どちらもしないは危険。(3)両方やったらいいんじゃないか。陶芸でもいいし、写真でもいいんじゃないか。山梨県でこんな講演をしたら、感想シートに「こんなまちがある」と書いた人がいました。「田も作り、詩も作ろう」を掲げた町があります。インターネットで検索すると、写真がでてくる、びっくりしました。山梨県笛吹市の旧八代町。ことわざを知っている人が「うちは農業もさかんだし、文芸もさかんだし、両方やったほうがいいんじゃないか」と識者がいって標語になったのだと思いますが、合併したけど、のこっている。首長次第でこれができるんじゃないか。田も作ろう、詩も作ろうと。

霧の芸術祭と亀岡

霧の芸術祭。亀岡、福知山も霧の都。教えている福知山公立大の学生が一番驚くのが霧。霧の持つ力は、農作物を優しく包んだりとか、いろんなことがある。キリカフェができるというのはすばらしい。今は、世の中をスローダウンさせるだけでなく、アイデアやビジョンをつくる力が非常に大切さではないか。キリカフェという場は今後のビジョンをつくる場になるのではないか。亀岡は京都市内まで近いので、寝に帰るだけの人もいる。距離によるマイナスもある。どういうまちづくりを考えたらいいのかなあ。

新しい組み合わせをつくっていく。このキリカフェで新しい組み合わせがうまれたらいいなあと思っています。暮らしを丁寧に、創造性の発揮。最近かんじているのは、村にいて田んぼとか畑をやっている地元出身の若い人はオペレーター的には手伝うけども、みそをつくるのか、かんがえにくい。都会からわざわざ農村にやってくる人はみそをつくりたい人。農村の文化の継承者は都会の若い、こころある若い人だなあと思います。農村にいながら創造性の発揮は難しい面があると思うのですが、移住者に期待したいのはここらへんです。

今、地域にはUターンや移住してなにかを創り出す人、ことおこしをする人、ローカルビジネスをする力が必要かなと思います。まちは魅力の競争になる。綾部は過去の遺産でいきているところがあって、あたらしい魅力をつくることが重要。アイデアは交差点から生まれる。亀岡の中でもつくっていくことが重要なのかなと思っています。まちづくりの方程式に先人の知恵は外せない、若い感性がうまくかみあえば、すばらしいものができる。霧の芸術祭もこういったもの。古いものと古いものをたせば、ニューがつくれる。霧は古いものかな、地学的なもの。古いものをたせば、ニューができるので組み合わせてほしい。地方にありながら、どこか最先端のまちをつくりたいというのが私の願い。
なんとか、食べていかないといけない。できたら家庭を築いていただきたい。そしてできたら社会を変えていただきたいと思っています。最後ですけど、みなさまは何をこの世に遺していくのか、お金か事業か、思想か(内村鑑三さんの言葉)。霧の芸術祭によって亀岡が魅力的なまちになっていく。となりのまちの市民として楽しみにしている。ありがとうございました。

塩見さんは半農半Xだけでなく、AからZのキーワードで物事を紹介したり、分析する「A to  Z」の手法を紹介しています。当日、会場での意見やアンケート結果から、亀岡の「A to Z」をまとめました。

A  穴太寺
B  ベッドタウン
C コスモス園
D 出口王仁三郎
E エスペラント語
F 霧(FOG)
G ガレリアかめおか
H H商店街
I 石田梅岩
J 城下町
K 鍬山神社
L 出雲大神宮(LOVEの神)
M みずのき美術館
N 並河成賢(米の品種改良)
O 円山応挙
P popo Club
Q  9号線
R リバー(桂川、保津川下り)
S サッカー(スタジアム)
T 砥石
U 京都学園大
V ベジタブル
W 水
X KIRI CAFÉ
Y  湯の花温泉
Z 雑水川


塩見直紀
1965年、京都府綾部市生まれ、同市在住。株式会社フェリシモ勤務を経て、2000年に半農半X研究所を設立。21世紀の生き方、暮し方として、「半農半X」というコンセプトを提唱。著書は台湾、中国、韓国でも翻訳され、海外講演もおこなう。綾部ローカルビジネスデザイン研究所(トヨタ財団助成)、スモールビジネス女性起業塾(京都府北部地域対象)、半農半Xパブリッシング(1人出版社)代表。総務省地域力創造アドバイザー。

(テキスト構成・KIRI CAFE)

次回
2018/10/13
KIRI WISDOM vol.2 「パワースポットとは何か」
ゲスト:植島 啓司(京都造形芸術大学教授)

 

2018/10/20更新