インタビュー 水江風海(書道)

気持ちを掘り起こして楽しんでもらう

大切なのは新鮮な気分

―――今回のワークショップをやってみていかがでしたか?

大人数の講座形式のものは経験があるのですが、今回のような少人数で1人ずつ向き合って成果を見届けるというというのは初めてだったので不安もありました。それでも客観的に見て確実に成果が挙がったので上手くいって良かったと思っています。

名前を書くというのも、普段教室で教えていることと大きく離れているわけではないので、普段の集大成という気持ちでした。

―――書道は感情で書くということをよく聞くのですが、実際にその時の気持ちが字に現れますか?

もちろんですよ。1枚目の真っ白な紙に向かう時の新鮮な気持ちが大切で、2枚目以降になると一枚目に書いた残像が自分の中で残ってしまいます。そうなると欲が出て全て自分の手の動きを不自然にしてしまい、作品がどんどん悪くなります。

一発目の新鮮な気分をどれだけ高めて1枚目に臨めるかということが大事になってきます。

書道は瞬間

―――その日の体調や姿勢、重心の傾きなどによっても字の出来栄えが変わってくることもありますか?

ありますね。自分の中でチェックポイントを持っておいて、それが練習の時から筆を構えた時に自然にできるようにしておかないと本番では発揮できないですよね。書道って瞬間ですよ、書くのってね。一瞬でバンと出すものなのであれこれ考えているようでは乱れてしまって良い作品はできないと思っています。

―――安定した自分なりの綺麗な字を書くにはどうしたらよいのでしょうか?

上手さの基準になるレベルが違うだけで調子の波は誰にでもあると思いますよ。僕らも当然良い日と悪い日があって、自分のイメージ通りに綺麗に筆が動く時は年に1回か2回しかないです。自分の中の最高のパフォーマンスはしょっちゅうできるものではないので、そこをどうやって上げていくかが一生のテーマですね。

芸術としての書道

―――水江さんにとっての書道とは何ですか?

僕の全てですよね。書道のために生活をしているので、健康でいることも書道のためですね。書道のスポーツと違うところは上手くなるピークが60歳を超えてからなんですよ。どの作家さんを見ていてもそうで、本当に努力をしている人は80歳を超えてからピークを迎えることもあります。するとそこまで健康でいないといけなくて、それも書道のための1つなんですよね。そんな意識で寝ても覚めても書道のことばかり考えています。

―――年々、ペンを持って字を書くということが減ってきていると思いますが、そのことについてどう思われますか?

今までは実用的なこととして教えていましたが、最近は僕らの教える目標みたいなものも変えていかないといけないなと思っています。書道を芸術的に捉えてもらって楽しんでもらう。なので、絵を描くのにどんな意味がありますかというのと近い感覚になってきていると思います。でも、みんなにも字を綺麗に書きたいという気持ちがあると思うので、それを掘り起こして楽しんでもらうという方向になると思いますね。

文 / 保田蒼大(京都造形芸術大学文芸表現学科3年生)

公開日:2019年7月4日