レポート 吉田欣司(木工)

木工「糸でデザインする椅子 ~椅子の座編み体験~」

 

「座編み」で椅子をデザインする

「座編み」とは、糸でデザインする椅子。樹脂を染み込ませて縒った紙紐、ペーパーコードを用いて作られる椅子のことです。画像を見ていただくと分かりやすいと思います。デザイン性があり、丈夫で長く使えるのが特徴です。

今回のワークショップは「椅子の座編み体験」。座編みで椅子を一脚作る、というものです。講師の吉田欣治さんは亀岡で活動されている木工家。自分で椅子をデザインする楽しさを知ってもらいたくて、このワークショップを企画したそうです。

用意してあったのは、組み立てられただけの椅子の木枠と、赤、青、黄色のペーパーコード。この2つの素材が組み合わさり、オリジナリティ溢れる椅子が出来上がります。ガラス張りのガレリアかめおかのホールの真ん中、若い方も、ご年配の方も、幅広い年代の参加者が集まり、いよいよ開始です。 

四苦八苦しながら、没頭する

まずは座面の制作から。お尻が乗る部分ですから、みなさん吉田さんの指示に従って、チュートリアルのような感じで進みました。座編みの体験は今回が初めての方ばかりで、長いペーパーコードや、慣れない編み方に四苦八苦しています。吉田さんは、手こずっている参加者を回って、「もっと引っ張りながらきつく編んだ方がいいよ」「ここの糸は下から通すとやりやすいよ」と、1人1人にアドバイス。丁寧に編み方を教えていました。その甲斐あってか、参加者の皆さんはメキメキと上達していき、側面に入る頃には完全に自分の世界に。座編みに没頭でした。

各々思い思いのペーパーコードを手に取り、椅子の側面に通していきます。各人各様の椅子が出来上がっていく様に、吉田さんも満足げの表情。どの色のペーパーコードを使おうかな。ここはやっぱこっちに糸を通した方がいいかな。段々と椅子が出来上がっていき、あっという間に2時間が経ってしまいました。参加した方々は「無心でできてストレス発散になった」「イメージしていなかったところから編んだりして、自分でもどんなデザインの椅子になるのか分からなくて面白かった」と、製作もデザインも楽しんでいた様子。「座編み体験」のワークショップは大成功で幕を下ろしました。

作ったものを持ち帰れるうれしさ

ガレリアかめおかのガラス張りの真ん中。他のワークショップの音が遠くから響く中、黙々と各々の椅子に取り組んだ座編み体験は、久しぶりに集中して物事に取り組んだ。こんなに楽しいならまたやりたい。と参加者の皆さんからも好評でした。

吉田欣治さんのワークショップがすごいのは、自分が制作した椅子を、自分で持ち帰ることができるところです。最大の特徴といってもいいでしょう。出来上がったオリジナルの座編み椅子を、満足げに、皆さん大切そうに抱え、帰っていかれました。

作品が展示されているだけの、従来の芸術祭とは全く違う。自分で体験し、自分で作り、芸術に直接触れることができる「かめおか霧の芸術祭」。その中でも、この椅子の座編み体験は、直に亀岡の特色に触れ、直に芸術に、デザインに触れることができるものだと感じました。

文 / 宮脇周哉(京都造形芸術大学文芸表現学科3年)

公開日:2019年7月4日