レポート 星野 潤(発酵食品)

発酵食品「家庭でできる糀作り~発酵で感じる命と微生物の旅~」

糀といわれてイメージが思い浮かぶ人は少ないだろう。星野さんは普段の仕事で味噌を作っているのだが、味噌を作る材料に米麹というものがある。米麹とは米に麹菌を付着させて発酵させたもので、米以外には豆麹もある。また、米麹は「糀」とも書く。

味噌を作るのに欠かせないのみならず、甘酒などの材料としても使われる糀。今回は実際に糀を作り、さらに「抱き糀」という発酵の進め方を教わった。

まずは自己紹介から

糀作りに取りかかる前に、まず参加者全員がそれぞれの自己紹介をすることになった。全員で調理台を囲み、星野さんをはじめ、順番にそれぞれの職業や今回のワークショップに対する意気込みを語っていく。テーマが食品作りだからか、女性の、さらには主婦の方が多く参加していた。しかし中には農家の方や、我々と同じく取材に来られた方も。星野さんは、初対面の人と共同で作業を行う時には、まず自己紹介から始めるという。まず何かしら話さえすれば、その後はスムーズに事が進む、と過去の経験から学んだそうだ。

材料の説明から米の蒸し方、その際の注意点などに到るまで、参加者の方々は大変熱心に集中して聞いておられた。星野さんの手が空くと数々の質問を投げかけ、メモを取る。工程が進むたびに変化する米を実際に触り、食しながら具合を確認する。麻布に米を広げ、冷ましながら麹菌を混ぜる作業では、やや力がいる作業を交代で行いながら、会話は絶え間なく続いていた。

星野さんは今回のワークショップに参加を決めた時に、亀岡の人々が協力してひとつのものを作り上げていく様子にとても共感したという。糀作りの際も、地域の方々が協力して作り上げていく良さを身を以て体験することができた。

糀を抱いて過ごす

作業がすべて終わり、完成したものを受け取ってから、「抱き糀」について説明を受けた。抱き糀とは、人が糀を抱きかかえ、体温を利用して発酵を進める方法だった。ワークショップの時間内に完成させることはできないので、続きはそれぞれ自宅で、となった。筆者も二日間抱いて過ごし、確かめてみると、米の内部が白く変色しており、菌が根を張っているのを確認できた。多少時間はかかるものの、発酵が進めば麹菌が自ら発熱するようになるので、冬にはおすすめかもしれない。

文 / 新谷航(京都造形芸術大学文芸表現学科3年)

公開日:2019年7月4日