レポート 綿引恒平(陶芸)

陶芸「『土の色いろいろ』亀岡の原土(掘った土)から粘土を作る」

朝の亀岡は濃い霧に覆われていて、まさしく霧の芸術祭のキックオフイベントにふさわしい天気になりました。

講座の内容は、焼きものの元となる粘土を実際に自分たちで作ってみる、というもの。綿引さんは「1000年前の亀岡の焼きものを再現する」陶芸を志しています。焼き物の元となるものを理解してほしい。そんな思いが込められた講座でした。参加者は子供が多かったですが年齢層は幅広く、20代もいれば、高齢の方も。

 使う材料は、綿引さんが亀岡市内で採ってきた粘土の元になる原土4種類。山中から採ってきたものもあれば、池の底の泥を乾燥して固めたものもあったりと、場所も材質もさまざまです。

参加者はその石をハンマーで細かく砕きふるいにかけ、サラサラとした粒子にして、そこに少しずつ水を加えて程よい硬さの粘土を作っていきました。石をハンマーで砕くだけでも参加者それぞれの個性が出ており、豪快に砕く人もいれば、慎重に砕く人も。子供の中には楽しそうに、大きな音を立てながらハンマーを振り下ろしている子もいました。1つ作り終えたら2つ目へと。4種類の原土の中から2つ以上選んでブレンドして作ってもいいと最初の説明で言われていた参加者のみなさんは、様々な組み合わせで、質感、感触の違う粘土を作っていきました。原土に水だけ入れて溶かしたり、試行錯誤を繰り返しており、まるで実験をしているようでした。

 最初は少し緊張した雰囲気でしたが、綿引さんの「少しの間だけど、みんなに仲良くなってもらいたい」という気持ちで参加者同士の自己紹介を最初にしたことと、みんなが粘土を作るという同じ作業をしていることがあり、次第にその緊張も解け、和気藹々とした雰囲気になっていきました。粘土を作っている際、参加者の間での道具の貸し借りがあったので、それも仲良くなっていった要因の一つのようです。

綿引さん自身も、教室内を歩き回り参加者に声をかけたり、アドバイスをして楽しそうでした。あっという間に過ぎた2時間。WSを終えた参加者たちは作った粘土を見せ合い、その感触を伝えあったりと、笑顔の絶えない2時間でした。WSを終えた後、綿引さんも参加者と仲良く話しておられました。

文 / 西村瑠花(京都造形芸術大学文芸表現学科2年)

綿引恒平(わたひき・こうへい)
陶芸家。白川真悠子と共同で陶磁器スタジオ「 WATAKAMA/わたかま」設立。 2016年 「パンのうつわと木のスプーン展」 薪窯パン ふくくる。 2017年 「 ふゆのうつわ展」 薪窯パン ふくくる。 2017年 「GIFT BOX 2018」 京都文化博物館。陶芸・木工・絵の具あそびなど、いろいろな素材を使ったワークショップも不定期に開催。

公開日:2019年7月4日