開かれたアトリエ | おむす美展
2月17日(月)から3月16日(日)まで、亀岡市役所地下1階にて「×亀岡高校」の取り組みとして、亀岡高校美術・工芸専攻の12名の生徒たちによる作品展を開催しました。
出展者の生徒たちが、学校で日々様々な課題を通して培った想像力と技術で、自分自身でテーマを見つけ、それぞれの思いを表現しました。今回は、「自分たちの個性豊かなそれぞれの作品には、よく見て、味わってみないとわからない物語や魅力、試行錯誤の時間がギュッと詰まっている」という思いから、「おむす美展」と名付けました。
見る人が作品に触ったり、中に入ったり、メッセージを残すなど、見る人の動作や感情で作品が完成することを狙った、作者と作品を見る人との結びつきを意識した作品を多く発表されました。
【出展者名(読み仮名)・「作品タイトル」】
・1年生
足集利 未結(あしゅり みゆ)「2月20日午後6時23分」
見る人の位置や時間帯によって作品が変化することをテーマに、開かれたアトリエの大きな窓一面にステンドグラスのような作品を展示しました。トレーシングペーパーやセロファンを使い、昼間の透き通る美しさと、夜の光を反射する美しさを表現しています。また、アトリエの中に鳥のランプを設置し、時間帯によって、女の子が鳥を追いかけていることを発見できます。
「2月20日午後6時23分」とは、日没後の、外が暗い状態での作品の完成を意味しています。
岡山 にち保(おかやま にちほ)「手」
見慣れているものが、状況が変わると急に不気味な存在になる、ということをテーマに、さまざまなポーズをした手を、壁から生やすことで、見慣れているはずの手が急に壁から生えていることへの不気味さを表現しています。
2作品を見る人が、不気味だと感じながらも近づきたくなり、実はお茶目なポーズをとっている作品の手と自分の手を合わせたり、近づかせたくなるよう、見る人の手と作品の手が交流することで作品が完成します。
佐藤 たまき(さとう たまき)「キマグレ」
猫の、飼い猫でも野良猫でも、人に媚びることのない逞しさや自由な姿を表現するため、開かれたアトリエ内を自由に動き回っているような、神出鬼没な猫の作品です。シルエットだけでなく、壁から出てきている猫や、壁の中に入ろうとしている猫・・9匹全てを見つけるため、アトリエ内を探し回る方々が多く見られました!
田中 柚希(たなか ゆずき)・農本 杏実(のうもと あみ)「トキノキ」
作品を見る人たちが、それぞれの叶えたい夢や叶えたかった夢を花びらに書き、桜の木に飾っていき、実際に桜咲く頃には、作品の桜の木も満開にさせる作品です。
開かれたアトリエに入ってすぐの黒板に手作りの桜の木を作り、作品を見る人は、メッセージを書いた花びらを黒板に貼って、日々さまざまな「叶えたい夢」も、「かなえられなかった夢」も集まりました。叶えられなかったメッセージの花びらは、決して後悔や悲しみを伝えるものではなく、叶えたいメッセージの花びらは、希望に満ちた花びらに見え、全く逆のテーマで書いているのに、同じように美しいことを伝える作品となりました。
谷村 瑠南(たにむら るな)「ぬましば」
柴犬の可愛さに「沼って」いる作者が、より多くの人に同じように沼って欲しいという願いから、触れば触るほど、もっと触りたくなる柴犬の作品でした。
渡部 葵(わたべ あおい)「光」
外側を見て、わかったつもりになっても、内側を理解できたわけではなく、その内側こそを、覗き込んで知って欲しい、という思いをテーマに、外見は大きなお花に見えても、その内側をどれくらいの人がわざわざ覗き込んでくれるだろう、という問いかけをする作品です。
お花の内側は、あえて少しで伸びしたり、屈んで覗き込まないと見えないようにしており、その内側を覗いた人は、「想像した通り」と感じる人おいれば、「意外だ」と感じるかもしれません。
・2年生
清水 千寛(しみず ちひろ)「コドモゴコロ」
子どもの頃は、なぜだか狭いところが好きだったけれど、大人になると、ひっそりとで身を隠して、落ち着く小さな空間がなくなってしまった気がする・・という気づきから、カクレクマノミがイソギンチャクに隠れているように、大人も子供心を取り戻す空間の作品です。大人はそっと身を潜める人が多く、子どもは何度も往復して、むしろ目立ってしまっているという、「コドモゴコロ」を改めて考えさせられる作品となりました。
高尾 愛羽(たかお まなは)「香風」
何かの匂いを嗅いだときに、どこかで見た風景を思い出すことがあるように、お花を見たら、それぞれの人の記憶の中にあるお花の香りを思い出して欲しいというテーマの、お花を散りばめたドレスです。香りは、風になびいて漂ってくるように、ふわりとしたドレスが印象的です。
爲本 ひなた(ためもと ひなた)「壁の花」
物理的な壁と、人と人との精神的な壁、何かに挑戦したときにぶつかる壁・・さまざまな壁がテーマの作品です。様々な壁があるけれど、全てそれは必ず自然とあるもので、自分の人生を彩ってくれる、という思いが込められています。
あえて作品の前に椅子を置き、そこに人が座っておしゃべりできる空間を作ることで、作品の壁はあえて鑑賞するものではなく、暮らしの中に自然とあるものであることを表しました。
野瀬 佐和子(のせ さわこ)「お絵かきするまえに。」
子どもの頃に読んでいた絵本をテーマにした作品です。絵本の中のような生き物が、画材を探し求めているというストーリーで、巡り堂の画材コーナーのそばに展示しました。
藤田 葵(ふじた あおい)「新しい色 発見」
人それぞれの個性を色で表し、交流することで色が混ざって、自分の想像しなかった色になることをテーマにしています。個性を傘の色で表し、その下に人が入ることで、今まで知らなかった自分の色を発見する作品でした。