城跡芸術展2023

ARTISTS出展作家

松岡勇樹Matsuoka Yuki

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1994年 京都府亀岡市生まれ
三菱商事・アート・ゲート・プログラム2018年度奨学金制度奨学生/2020年 第8回郷さくら美術館 桜花賞展 買上げ
京都市立芸術大学作品展2019 同窓会賞/京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画修了
2023年 京都日本画新展2023 奨励賞・京都市長賞
現在 京都芸術大学通信教育部書画コース 非常勤講師

 


「はじまりもおわりもない#2」
「はじまりもおわりもない#3」
「おわりを知り、はじまりを知り得る」

私にとって描くことは、⾃⼰が世界を獲得する⾏為です。
現在は、⾃分が⽣きている“⽇本”の⾵⼟から⽣まれた絵画の創作を志向しています。

 

出品作は、この3年間の事故と2度の利き腕の⼿術・リハビリ、祖⺟と恩師の死を経験し生まれたものです。私は⽣と死、はじまりとおわりを意識し始め、“何故それを描かなければならなかったのか”創ることの原点、はじまりをやらなければならないと⾄りました。創作は左⼿でネームペンを握り、100均の紙に病室から⾒える雲の変化を点描することからはじまりました。病棟から出ることはできず、持ち合わせのペンと ⾃由のきかない腕でできることでした。次第に点は塊を成し、まるで⼤気の流動や鍾乳石、花のような造形を獲得しながら膨張しはじめました。はじまっていく造形はある点からこちらに向かってくる⼒であり、そのエネルギーと時間を表現したいと思いました。また、これらは彫刻の奥⾏きや時間を宿したモデリングとの親和性を感じさせます。

 

そして同時に⾃⾝の⼿術体験と医療に消費される豚、多くの死の上に今の私があることを⾃覚した時、分かちがたいものになったのです。死そのものである⽪を⼿術⽷と同じナイロン⽷で縫い合わせ、ブレンドした墨をペンに詰め、点描しました。描くほど、点の集積と描いた時間や⾏為、つまり描き⼿の“⽣”が⾒えてきました。そして、⽪の傷や⽑⽳が⾒え、遠ざけたいはずの豚の死が⽣々しくあらわになったのです。つまり、“⽣と死の現場”が⾃覚されたわけです。この世界と⾃分 (⼈間)はとめどなく繋がっていることに気付かされます。

 

こうして、私は“私の絵画”のはじまりと出逢うことができたのです。