インタビュー 宮前農園 宮前裕太さん(農家)

  • インタビュー

宮前農園 宮前裕太さん

文・写真/池上真紀

地元亀岡を 皆の面白い場所にしていきます!

とても気さくにお話してくださった宮前さん。笑顔が素敵!

好きな音楽や服を扱うアパレル関係の仕事をし、プライベートでは、毎週末サーフィンや自転車・山登り、トレイルランニングをする生活をしていた二十代。いつしか自然の中で仕事をしてみたくなって三十代半ばでの就農。滋賀県での三年間の修業期間を経て、二〇一九年、亀岡に移住し、旭町でイチゴ農家となって二年目となる宮前農園の宮前さん。この先の夢は、地元亀岡を面白い場所にすること。今どんなことを考えておられるのか、お話を伺いました。

Interview

 

地元密着型のイチゴ農家やってます

――どうしてイチゴ農家になろうと思われたのですか?

もともと観葉植物が好きで、自然の中で仕事をしたいなぁと考えていたときに「農業やったらいいんじゃないか」と思いついたんです。それで家族に話したら、「いいよ、好きなことやったら」と賛成してくれたんですよ。それで農業の修業をするために、農家の求人を探していたところ、募集をしていたのが滋賀県のイチゴだったんです。農業をするなら、果樹をやりたかったので、イチゴを作ろう。フルーツの方が絶対に面白いって思ったんです。

――京都市内出身である宮前さんが、移住先として亀岡市を選んだ理由は何ですか?

今、僕が作っているイチゴの品種は、「章姫」と「紅ほっぺ」なんですけど、研修先の滋賀県は、イチゴ農家がいっぱいいるんですよ。県がイチゴ農家を推奨しているので。なので、業界としてはすごく飽和状態だし、競争が激しいのと、京都府産のイチゴが作りたいなと思ったんです。
子どもみたいに大事なイチゴたち

――亀岡は、イチゴを作る環境としてはどのような感じでしょうか?

亀岡には、施設栽培もなく、イチゴ農家が本当に少ないので、チャレンジしてみようという思いで始めました。亀岡は霧が有名ですけれど、実はこの霧がイチゴには最悪で(笑)イチゴは日焼けして赤くなるので、日光がとても大事なんです。なので、ビニールハウス内に電球をつけて日照時間を補うなど、その環境に合わせたいろいろな工夫を常に試行錯誤、模索しながらやっています。もともと亀岡にイチゴ農家が少ないのは、こういった環境によるところが大きいのかもしれませんが、温暖化の影響のせいか、年々稲作の時期もずれていっているし、昔に比べたら霧も薄く、頻度も少なくなっていると聞いたりもするので、イチゴが育てられる環境になってきているのかなと思いますね。日本で一番日照時間が少ないのは鳥取といわれていますけど、その鳥取とか、例えば、極寒の北海道でもイチゴの栽培をされているので、ここ亀岡でもおいしいイチゴができると思っています。
ハウス内はとてもデリケートに管理されているため、部外者は立ち入り禁止

――宮前さんのイチゴは、このビニールハウス前での直売には朝早くから行列ができていたり、最寄りの「なごみの里あさひ」さんでも、すぐに完売になるなど二年目とは思えないほどの人気ですね。

地域の方たちが、うちのイチゴを紹介してくださるので、本当にありがたいですね。このあたりは野菜をたくさん作っておられるので、この地域にないものを作って、地元の人たちに食べていただきたいと思っています。イチゴ農家としてご飯が食べられるようになるには、ハウスの面積でいうとあと一つ二つ増やして、人一人ぐらいを雇うぐらいの規模が必要といわれているので、もうちょっと増やしていけたらと思っていますが、ハウスのことも、「いつ増やすんや」とか、地元の方々が声をかけてきてくださるので、信頼とか期待をしてもらっているのが嬉しいですよね。  イチゴの卸先とは気軽に声をかけてほしいこともあって、LINEなどで僕が直接オーダーを受けています。「明日(イチゴ)どう? いけますか?」みたいなメッセージが来て、「いけますよ! 取りに来てくださいね」そんなやり取りで取引させていただいています。どんな取引先であっても、人と人との付き合いをしたいので、自分の作った子どもみたいなイチゴを大事にしてくれるところとのお付き合いを一番に考えていますし、かつ、地元密着型で、なるべく亀岡界隈の方との取引をメインにしたいと思っています。
宮前農園のビニールハウスの前で

和菓子職人の父と共同で加工品作りに挑戦

――イチゴの収穫期以外はどのようにされているのですか。

イチゴ農家としては、十二月~六月までの半年間で一年間の収入を稼ぎます。今のように一人でやるにはそれでいいんですけど、人を雇うとなると、収入がない時期に何かほかの作物を作っていく必要があるなと思うので、イチジクなどの果樹を考えています。あと、個人的にはバナナを作ってみたいです。京都産のバナナって食べたくなりませんか(笑)。バナナも内陸地でできるような品種もあるので。まぁバナナは夢ですけどね。  あとは、六次産業化としての加工品作りですね。僕が和菓子好きなので、和菓子の加工品を試作しています。イチゴを使った和菓子というとイチゴ大福がありますが、イチゴ大福などは、イチゴの卸先のお店が作られているところが多いので、それとは違うものを企画しています。実は、父が和菓子職人で超一級の腕前なので、一緒にできたらいいなということもあって準備しているところです。職人なので、父もこだわりがありますし、僕も結構こだわりがあるほうなので、なかなか大変ですが、今年中にできたらいいなと思っています。父も一緒に商品作りができるのは喜んでいますね。
「面白いと思って作ってます」という白いイチゴ

「ここおもろいねん!」って言わせたい

――そのほかにも、地元の若手の人たちとグループを作って活動されていると伺いました。

「KYU」という川東若手組合というグループを立ち上げました。この地域は、高齢化が進んでいて、平均年齢が七十歳代とかになるんです。僕は、三十九歳になりますけど、個人農家としては、一番若いほうになります。そういった若手で、亀岡やこの地域を盛り上げていくことをやりたいなと思っています。どうしても、大人になると地元を離れる人が増えていくんですよね。「ここには何もない」って。そうじゃなくて、「ここおもろいねん!」っていう感じができればいいかなと思っています。僕はまだこの地域に来て二年目なので。全然この地域のことを知らないからこそできることってあるじゃないですか(笑)。なので、だからこそ面白いことをやっていこうかなと思っています。

――「面白いこと」とは、どんなことをやってみようとお考えですか?

この地域は見ての通り自然がとっても多いので、このあたりの山を開拓して、山にかかわることをしたいなぁと思っています。僕が二十代半ばぐらいの時に、アウトドアにはまっていて、その経験を生かして、例えば、自転車されている方や、アウトドアの方が来られるフィールドづくりなどをしてみたいです。そこに、個人的には、やる気のないゆる〜い感じの喫茶店とかやりたいですね(笑)。昔のジャズ喫茶みたいな感じのものがしたいです。好きな音楽を聞きながら、ゆっくりまったりしていただける場所があるのもいいなと思っています。最近、移住されてくる方も多いですし、皆さんのやりたいことから何か新しいものを一緒に作っていけたらと思っています。

宮前農園:https://www.instagram.com/miyamae_nouen/
(ストーリーにて、宮前農園の毎日の出荷情報をチェックできます!)

インタビュー・文・写真/池上真紀
インタビュー日:2021年 1月〜2月